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熊蔵を帰して
Sonntag, 24. Februar 2013
熊蔵を帰して、半七はすぐに朝飯を食った。それから身支度をして愛宕下へ出かけて行ったが、その途中に少し寄り道をする用があるので、日蔭町の方へ廻ってゆくと、会津屋という刀屋の前に一人の若い武士が腰を掛けて、なにか番頭と掛け合っているらしかった。ふと見ると、その武士はきのう湯屋の二階で初めて出逢った怪しい箱の持ち主であった。 半七は立ち停まってじっと視ていると、武士はやがて番頭から金をうけ取って、早々にこの店を出て行った。すぐにその後を尾けようかとも思ったが、なにか手がかりを探り出すこともあろうと、彼は引っ返して会津屋の店へはいった。 「お早うございます」 「神田の親分、お早うございます」 番頭は半七の顔を識っていた。 「春になってから馬鹿に冷えますね」と、半七は店に腰をかけた。「つかねえことを訊き申すようだが、今ここを出た武家はお馴染の人ですかえ」 「いいえ、初めて見えた方です。こんなものを持ち歩いて、そこらで二、三軒ことわられたそうですが、とうとう私の家へ押し付けて行ってしまったんですよ」と、番頭は苦笑いをしていた。その傍には何か油紙に包んだ硬ばった物が横たえてあった。 「何ですえ、それは……」 「こんなもので……」 ファンド設立・ファンド組成 - ファンド監査 銀座悠和公認会計士共同事務所 My Homepage