俺はつくづくと考へる
Montag, 13. Mai 2013
俺はつくづくと考へる。世の中の奴らは、もちろん嘘で固まつてゐるといふ事実だ。
情なくなるから、あんまり他人さまのことはいふまい。手近なところで、俺の信じてゐる彼女の態度はどうだ、だんだん世間なみに嘘をおぼえこみ、なんにもないところから、鶏を飛び出させたりする手品師のやうな真似を始めだした。
――真個うにお可笑な方ね、お金が無くなれば、乞食のやうな惨めな気もちになつてしまふのね。
彼女の観察は当つてゐた、しかし俺は決して不自然なことゝは思つてゐない。
俺は社会主義運動を始めるのだとその抱負を語つても、彼女はてんで対手にしてくれない。
――貴方なんて、生まれつきのブルジョア思想よ、どうしてそんな荒つぽい運動が出来るものですか。
副食物のこと、室内装飾のこと友人との交際のこと等色々のことに、贅沢三昧をいふことに彼女は腹を立てゝゐた。
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