返事をしない以上
Samstag, 16. Februar 2013
返事をしない以上は直に突き殺しても差支ないのであるが、みすみすそれが顔を見識っている大尉であるだけに、衛兵もさすがに躊躇した。再び声をかけたが、大尉はやはり答えなかった。その中に衛兵は不思議なことを発見した。大尉の持っている提灯は紙ばかりで骨がなかった。大尉は剣も着けていなかった。衛兵は三たび呼んだが、それでも返事のないのを見て、彼はやにわに銃剣を揮って大尉の胸を突き刺した。大尉は悲鳴をあげて倒れた。 衛兵はその旨を届け出たので、隊でも驚いた。司令部でも驚いた。当番のS君は真先に現場へ出張した。聯隊長その他も駈付けて見ると、M大尉は軍服を着たままで倒れていた。衛兵の申立とは違って、その持っている提灯には骨があった。しかし剣は着けていなかった、靴も穿いていなかった。殊に当番でもない彼が何故こんな姿でここへ巡回して来たのか、それが第一の疑問であった。取あえずM大尉の自宅へ使を走らせると、大尉は無事に蚊帳の中に眠っていた。呼び起してこの出来事を報告すると、大尉自身も面食って早々にここへ駈付けて来た。 歯科 コンサルタント 金が物を言う